和時計

和時計をご存じでしょうか?
江戸時代に不定時法で時刻を表示した時計です。

西洋から入ってきた時計を参考に日本の生活事情に合わせて作られたものですが、季節によって異なる昼と夜の時間も修正できるようになっていました。

殿さまが主に使っておられたので「大名時計」とも呼ばれます。専任の時計技術者は「御時計師」として尊敬されたようです。

定時法と不定時法


明治になると西洋に倣い、日本も定時法に変わりました。

定時法というのは昼夜の長さに関係なく、1日を24時間で区切る時刻制のことです。

一方、不定時法というのは昼間と夜間をそれぞれ6等分するもので、一刻(2時間)の長さは季節によって異なります。

九・八・七・六・五・四・九・八・・と続きますが、これに「明け」と「暮れ」を加えて暮れ六などと呼びました。

落語の「時そば」はこの不定時法を利用した名作ですが、ご存知の方も多いでしょうね。ちなみにおやつは八つ(午後1時~3時)頃に間食をしたことの名残です。

江戸時代は朝晩二食の生活でしたから、小腹の空く八つ頃に寿司などをつまんで食べたと聞いています。当時の職人たちにとって寿司はおやつだったのですね。

自然に合わせた生活時間を

人間の体には不定時法が馴染むと思います。

日の長い夏場は長く働くことになりますが、日の短い冬場は寝ている方が長くなります。

損とか得の価値観で測るとややこしくなりますが、自然に合わせた生活時間は人に優しいのではないでしょうか?

今の日本人は無理をし過ぎていないでしょうか。
生活するための仕事が生活を壊すことになってはなりませんものね。
行き詰って「幕引き」なさる方も多いようですね。

独立時計師協会

スイスには「アカデミー」と呼ばれる独立時計師協会というものがあります。
フィリップ・デュフォーやアントワーヌ・プレジウソ、ヴィンセント・カラブレーゼなどはよく知られる大御所です。

最近では日本の菊野昌宏さんが認められて加入しましたが、彼の代表作が「腕時計の和時計」です。

季節ごとに昼夜の長さを自動で修正するものですが、よく作ったものだと感心します。

日常生活に不必要なものが真剣に作られることは素晴らしいことですが、それらが日常生活で活用されるともっと素晴らしいと思います。

立ち止まって生活のあり方を考えてみたいものですね・・

和時計のレプリカ

当店にはレプリカの和時計がありますが、子供さんやお年寄りが珍しそうに見ておられます。

天符(てんぷ)という横棒が二本あり、水平に揺れながら時刻を刻みます。

昼用と夜用でてんぷの長さが異なり、昼から夜になると切り替わります。

てんぷは掛け時計の振子に相当するものですが、ゆらゆら揺れる長閑さが魅力です。ろうそくなどの炎の揺らぎも同様ですが、人間にはこのくらいの流れが合っているのではないでしょうか。

暁(あかつき)や東雲(しののめ)は朝に、薄暮(はくぼ)や黄昏(たそがれ)は夕方に使う言葉ですが、すっかり聞かなくなってしまいました。

時間をデジタルで切り刻んでは味気ないと思います。ぼんやりとした時間の感覚もまた大切です。

急ぎ過ぎるこの国の人たちはどこへ向かうのでしょうか・・
リニア新幹線は東京と名古屋を結ぶよりも月へ向けて欲しかったと思います。
ゆっくりとまいりましょう・・

おすすめの記事