時計職人キャビノチェのお話

当店は小さい店なのでいつも一人でいるのですが、「寂しくないですか?」と聞かれることがあります。

個人差はあると思いますが、一人でいることにさほどの抵抗はないですね。

つながっていないと落ち着かない今時の人々とは少し違うと思います。

スイスの時計職人・キャビノチェ

昔、スイスの時計職人達は屋根裏の小部屋で時計を作っておりました。

雪に閉ざされる冬の半年間は農作業もできませんし、生活を立てる大切な収入にしていたのですね。

その生活の中で時計作りの技術を磨いたのですが、彼ら時計職人のことを「キャビノチェ」と言います。

通の方ならご存知でしょうか、明り取りの窓から入る光を頼りに作業する姿のことなども・・・

彼らの多くは独りで作業するか妻が隣で手伝うぐらいのものでした。

今でも黙々と屋根裏で時計を作る、古風なスタイルで仕事をする時計師は少なからずいるそうです。

店の奥でひっそりと作業にいそしむ日々


さて、私は・・・と申しますと屋根裏ではなく、小さな店の奥でひっそりと作業をしております。

私の仲間でも独りで店をやっている者はおりますが、彼らはこっそりDVDを見たりプラモデルを作ったりしているようですよ。

そんなに多くのお客さんが来る仕事ではありませんので、時間を潰すことと気持ちが和らぐことを考える訳です。

とても孤高のキャビノチェにはほど遠いのですが、「屋根裏などで卑屈になってはいけない」とうそぶいています。

追われる仕事が多いこの時代に困ったものですが、長閑(のどか)なことも大切です。

時には仕事が立て込むことも

そんな小さな店ですが、日曜日などはお客さんが重なることもありまして慌てることも多いですね。

電池交換などは10分~15分位で終わるのですが、作業中に別の方が時計を取りに来られるとか修理の相談が入るなどすると焦りますね。

暇な時を選んで来て下さればよいのですが、皆さんそれぞれに都合がありますのでご迷惑をかけることもよくあります。

扱う物が小さいだけに一層気を使います。

小ねじを飛ばしたりピンを落としたりと舞台裏は活気に溢れます。

いっそ屋根裏部屋でこっそりとやりたいものですが、冷や汗かきながら顔を紅潮させて必死にやるのです。

悲喜こもごもありまして一人でもそれなりに楽しんでおりますよ

細心の配慮で作業に当たっております

お預かりした時計に汚れやキズが付かないように・・・
小さな部品をなくさないように・・・

時計と向き合う時は神経を使います。

目や指先のケガも避けねばなりませんし、冬場の静電気対策も欠かせません。

時計師はよく手を洗うのですが、これは油脂や塩分除去以外にも静電気対策でもあるのです。

一瞬の電気ショックで時計を壊しかねないからなのですね。

このように細心の注意を払って作業をしております。
安心してお任せくださいね。

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