
腕時計はミクロコスモスと呼ばれますが小宇宙のことです。
小さなケースの中には精緻な機械が詰まっていてきら星のように見えてしまいます。
手巻きのシンプルなものでも百近い部品点数があるでしょうか。
時計のフタを開けてみると・・・
腕時計の裏蓋を開けると大小さまざまな形の歯車が見えますが、この並びのことを輪列と呼んでいます。
時計の裏側に配置される輪列が表輪列と呼ばれますので、時計は裏側が表となります。
針が付いているダイアル側が表ではないのですね。
腕時計の構造
ぜんまいが収まっている香箱車(一番車)に始まって二番・三番・四番車と続き、脱進機のガンギ車へとつながります。
ここでアンクルを介してテンプと交わります。
時計のチクタク音はここから聞こえます。
音の間隔やテンポがずれていると正確に動きませんから修理をすることになります。
テンプは時計の調速を司る心臓部です。二番車と四番車の真には針が付き、ダイアル上で報時する仕組みです。
厳密に言いますと二番車の真に被さるツツカナに分針が付きます。
時針はツツカナに被さる筒車に取り付きます。
ツツカナと筒車は日裏車(ひのうらくるま)が連絡します。
秒針は四番車の真に付きますが、四番真はツツカナの中を通っています。
真とは歯車の中心にある芯棒のことです。
三番車は二番車と四番車とをつなぎますが、ギヤ比を変える役割です。
複雑な絡み合いですので説明が難しいのですが、それだけ精密機械だということですね。
時計が動くしくみ
歯車の噛み合わせで時計は動きますが、正確に動かすための算数が必要となります。
12時間で一周する時針、60分で一周する分針、60秒で一周する秒針を正確に動かすための計算です。
歯車理論は難しいですから深追いはやめておきましょう。
スイスの時計職人
スイスの時計職人の中には部品一つから磨き上げるこだわり派もおられます。
徹底的に磨くことで精度と強度の向上につなげているのです。
スイスの時計職人については、こちらの記事で詳しく書いています
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スイスの時計職人・キャビノチェの話
見えないところまで手を抜かない職人の矜持が尊敬を集めています。
いたずらに高価な時計ではないのですよ。
日本でもかつてはスイスに追いつけ・追い越せで切磋琢磨された時代がありました。
1960年代には肩を並べるまでの実績を残されましたが、クォーツ時計への転換で技術の継承は途絶えたと聞いております。
生産ラインからは機械式時計用の製造機械は駆逐され、クォーツ一辺倒になったのです。
クォーツショックから現在の姿に
クォーツショックと呼ばれる変革を興し、世界を席巻したのですが、やがては安い海外勢に押されてしまいました。
1970年代後半頃からアンティークウォッチが人気となり、80年代には機械式時計も復活しました。
瀕死のスイス時計業界でしたが時代の後押しもあって息を吹き返し、今日に至るまで時計王国として君臨していることはご存知の通りです。
日本メーカーが機械式時計の復活に取り組む中で、引退された技術者に教えを乞うたという話も仄聞しております。
捨て去ることは容易いですが、復活させることは困難です。
落ち着いて考えてまいりましょう。見直すべきものは色々ありそうです。