スローライフのすすめ

スローフードというNPO運動が起こったのは1986年のイタリアでした。

伝統的な食材を使い、料理は時間をかけてゆっくり作りましょう、楽しみながら食べましょうというものです。

素晴らしい運動ですが中々日本では定着しないようですね。

ゆっくりと味わう生活を


昔はどこの家庭でも自前の畑で作った野菜を調理していましたし、味噌なども自家製でした。

字のごとく手前味噌ですが、家庭ごとの味があってスローフードを実践していたはずでした。

私個人的には、スローフードこそ復活させたい良き生活様式ではないかと思っています。

現代社会ではファストフードを食べることや、できあいものを買ってきて温めるだけの食事といいう方が多いのではないでしょうか?

偏った食事や過食のことなどもよく聞きます。

食べることや食べ方はとても大切なことですので、偏らず度を過ぎずにありたいものです。

医食同源などと呼ばれますが、改めて考えたいものですね。

時代の流れというものでしょうか、食事の中に「味わう」というゆとりがなくなってしまったように感じます。

食欲を満たし空腹を補えればよいのですが、それだけでは侘しい気もいたします。

心の滋養とでもいいましょうか、そんな当たり前にあったものが消えつつあるような・・見直したいものです。

スローライフは不便な面も

ゆっくりとした生活(スローライフ)のためには少々不便なことも必要です。

不便を楽しむ余裕と言った方がよいかも知れません。

手足を使う生活、汗をかく生活、辛抱して待つ生活・・色々あると思います。

時計のスローライフ!?

例えば機械式時計のぜんまい巻きなどもそうだと言えるでしょう。

手巻きの時計は毎日ぜんまいを巻くところから始まります。

パワーリザーブ(持続可動時間)は大体40時間程度ですので、毎日巻くことで時計の遅れを抑えることができます。

面倒と思われるかも知れませんが、時計の調子も判りますし習慣にしたいものです。

機械式時計は電池を使わず、ゼンマイのほどける力を動力として動く時計です。

腕に装着することでぜんまいが巻かれる自動巻き式と、りゅうずを回してぜんまいを巻く手巻き式とがあります。

自動巻きであれば腕につけておれば毎日ぜんまいを巻かずとも常に動いてくれますが、手巻きは毎日ぜんまいを巻くことが日課となります。

人の手で機械と交わり、共に時刻を刻みながら時間の中を流れて行くのです。

機械式時計は定期的な手入れが必要ですし、精度もクォーツ時計には到底及びません。手間をかけながら長く付き合うことを考えて作られていますので、世代をつなぎながら使える機械です。

スローライフにはぴったりですね。

セイコーのスプリングドライブ

最近ではセイコー社(日本)が開発したスプリングドライブという新しい機構が注目されています。

手巻き時計のようにりゅうずを回してぜんまいを巻きますが、調速(時計の進み遅れを調正)は水晶振動子とIC回路で行うものです。

クォーツ時計の精度を持ちながら動力源はぜんまいという構造ですが、開発したセイコー社でも20年以上の時間を必要としたと聞いています。

機械式時計にはテンプを中心とする調速機構がありますが、これに代わる新しいメカニズムです。

これは電池を使わずにクォーツ時計の精度を実現したいという技術者の強い意志と努力の結晶なのですね。

技術の進歩には瞠目するばかりです。

時計の動力源はさまざま

これまでの時計の動力のことなど少しお話しましょうか。

時計の動力源にはぜんまいの他に電池や太陽光があります。

太陽光を電気エネルギーに変換して時計を作動させる太陽電池は、1954にアメリカのベル研究所で開発されました。

これを時計に利用して「光線時計」の名で発表したのはパテックフィリップ社(スイス)で1955年だと聞いています。

これは太陽光で作られた電気でモーターを回し、70時間分のぜんまいを巻きあげることができたそうで、内部の蓄電池に電気を蓄えますので長期に亘って動き続けたようです。

水晶時計以前のトピックスです。

水晶(クォーツ)時計の前には音叉を利用した時計がありました。

音叉の振動が一定で安定していることを時計に応用したもので、トランジスタと組み合わせることで音叉発振器を作りました。

これが時計を動かしたのですが、日差(一日の進み遅れ)は一秒程度だったようですから大したものです。

1960年にブローバ社(米)が発表しました。

ただ、この会社は特許を公開しなかったために音叉機構が普及せず、この後開発された水晶時計に駆逐されたと聞いています。

最近復刻版が販売されたようですが・・

正確で省エネルギーな時計の開発を巡って色々と紆余曲折があったのですね。

技術開発の恩恵を受けつつもスローライフを楽しみたい

 

技術の開発は我々の生活を豊かにしてくれましたし、この先も続いてゆくことでしょう。

ただ、人の生活には適度な早さと緩さが必要だと思います。急ぎ過ぎた弊害があちらこちらでほころびを見せていることはご承知の通りです。

今あるものを大切にしながら古くからあるものや、消え去ろうとしているものなどを見直すことも大切です。

スローライフは特別なものではなく、少し前の日本にもあったことを考えたいものですね。

時計に関しましては微力ながら私たちがお手伝いできれば何よりと思っています。

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